
1月24日、国際通貨基金(IMF)は、2012年の世界経済の実質成長率の予測を3.3%に下方修正しました。その内容は、米国が1.8%、日本が1.7%、そして、ユーロ圏は欧州危機を背景に▲0.5%と、緩やかな景気後退としています。
今や米国に次いで世界で2番目の経済大国となった中国。その実質経済成長率は8.2%とされ、依然として先進諸国と比べ高成長が予測されています。しかし、下記のグラフにあるようにここ数年の中国経済の実質成長率の動きを見ると、2008年のリーマンショックにより前年の14.2%から9%台に大きく落ち込んでおり、2010年にはやや回復し辛うじて二桁成長に戻してはいますが、2011年には再び9.2%に減速しています。今回は、この中国経済の減速についてお話してみたいと思います。

出所:中国国家統計局「国内総生産(年別)」
2011年11月の新車販売台数は前年同月比2.4%減の165万6,000台となり、減少幅は前月より大きくなりました。中でも、商用車は12.6%の大きな減少となっています。2011年通期においては前年比3%増の1,860万台前後と、ここ10年で最低の伸び率にとどまる見通しです。
2011年11月の工業生産も伸び悩んでおり、自動車生産は前年同月比で1.3%の減少、化学製品のエチレン生産は1.9%の微増に抑えられています。マンションや鉄道などの建設もその勢いは弱いままで、鋼材価格は春先のピーク時より2割程下がっており、建設機械の生産台数も前年比で2割の減少となっています。
2011年1〜11月の固定資産投資は前年同期比で24.5%の増加となりましたが、高速鉄道の一部区間の建設中止により、1〜10月に比べ増加率が0.4ポイント下がっています。
そして、最も際立つものは、世界経済の低迷による輸出の減速です。2011年の輸出額は前年比20.3%増の1兆8,986億ドル(約146兆円)であり、3年連続で世界一となりましたが、増加率は秋から鈍化しており、輸出拠点として成長した沿海部の地域経済に大きな打撃を与えています。
こうした中、2011年12月14日、中国共産党と政府による「中央経済工作会議」は、欧州危機の拡大を踏まえ、世界経済情勢の厳しさと複雑さへの認識を表明し、成長の下振れ圧力と物価上昇圧力が併存している中国経済であるがゆえに、国内外の情勢を注視して危機意識を高める必要性を唱えました。
2012年の政策運営については、2011年の物価水準の安定を最重要とする方針から転換し、経済情勢の中での潜在的なリスクの防止をより重要な位置に置くとして、政策の重点をインフレ抑制から「成長促進」に移しました。
金融政策については、2010年秋から実施してきた金融引き締め策の「微調整」を、経済の状況をみながら適時適切に実施すると正式に決め、一段の金融緩和(注1)に乗り出す考えを強く示唆しました。
注1:中国の中央銀行である中国人民銀行は、2011年11月30日、欧州債務危機の影響による中国経済の
減速を懸念し、市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を同年12月5日から0.5%
引き下げると発表。本引き下げは2008年12月以来、ほぼ3年ぶり。
中国の有力エコノミストらによる予測では、2012年の実質経済成長率の平均値が8.4%となっており、インフレ終息の兆しがある中さらなる金融緩和を見込むとするのが大方です。
中国経済の2012年の成長率減速の主な要因は輸出の落ち込みです。最大の輸出先である欧州(注2)における、その債務問題がもたらす景気先行き不透明感の強まりからの影響は避けられないものとしています。このような欧州向け輸出の減少は中国の経済成長率を1.4ポイント程度押し下げると言われています。
もう一つの要因は不動産規制です。規制継続により居住用不動産の価値は今後年間で10〜15%程度の調整が考えられており、輸出の減速と地方政府の債務問題、そしてこの不動産市況の調整の3つの組合せが最大のリスクであると警戒されてもいます。
注2:ジェトロの輸出統計(国別・地域別)によれば、2010年における中国の輸出総額(FOB)1,577,932百万ドルの内、
欧州向け輸出額は355,204百万ドル(構成比22.5%)で地域別では最高。
中国政府は2012年の経済成長率の目標を、雇用と社会安定のために必要としてきた8%前後から7%台に下げ、3月5日に開幕する全国人民代表大会で温家宝首相がこれを表明することとしています。
中国政府には2012年についても経済成長率8.5%以上の達成が可能との判断もありますが、公式目標を7%台とするのは、やはり欧州危機による想定以上の景気減速への懸念があるからと言えます。温首相は「今年の第1四半期は中国経済にとって困難な時期になり、企業が直面する外需減少とコスト上昇圧力は、2008年の金融危機の時よりも大きい」と明言しています。
また、中国では数年以内に15〜64歳の労働力人口の減少が始まるため、潜在成長率はこれまでの10%前後から5年以内に7〜8%に下がると政府系シンクタンクにより試算されていますが、この経済成長率の引き下げもこの試算に沿った措置だとも考えられます。
下記のグラフが示すように、中国の2011年第4四半期の実質国内総生産は前年同期比8.9%増と成長率が4四半期連続で鈍化しており、減速傾向が浮き彫りになりました。輸出と国内投資の減速は中国企業の経営に大きな影を落としています。しかし、それは中国国内だけの問題ではありません。世界第二の経済大国である中国経済の減速は、欧州危機と同様に世界経済にとって大きな打撃となります。そして、言うまでもありませんが、東日本大震災から1年が過ぎようとしている日本にとって、欧米景気の低迷や歴史的水準にある円高とともに、その経済復興の大きな足かせとなり得るのです。

出所:中国国家統計局「国内総生産(四半期別)」